私が子供の頃(つまりは昭和の時代です)、この植物は「キリン草」などと呼ばれていました。ため池の土手などの空き地に、他の植物を圧倒するかのように群生し、背は子供の身長より高く、しかも派手な黄色い花が集まって咲く姿は強い印象を残しました。聞けば、北米から来た外来生物で、その花粉は花粉アレルギーの原因あるという話が流布していました。「ストップ・ザ・キリン草!」といったコピーのついた、駆除を啓発するチラシも見た記憶があります。そのような訳で、私と同世代の方々にとって何となく「悪役」のイメージがついてまわる植物かもしれません。
花粉アレルギーの原因であるという件について―これは今では冤罪であると考えられています。セイタカアワダチソウは昆虫が花粉を媒介する植物で、アレルギーの原因となるような大量の花粉を巻き散らかすタイプではないからです。セイタカアワダチソウの花期に花粉アレルギーの症状がでた場合、その原因は同時期に咲く同じキク科植物のブタクサだろうと言われています。もう20年以上前になりますが、カナダの海外研修に引率させてもらった際に、現地の先生がセイタカアワダチソウを「pollen allergy…何とかカントカ…」と紹介しておられたのが意外でした。
さて、セイタカアワダチソウは根から周囲の植物の成長を阻害する物質を分泌していることがわかっており、これをアレロパシー(他感作用)と言います。子供の頃、池の土手のほとんどセイタカアワダチソウに覆われていたのはそのためか、と今更納得する訳です。
【問題】近年、セイタカアワダチソウはかつてほど目立つ存在ではなくなりました。その原因はいくつか考えられています。どんなものがあるか、調べてみましょう。
自ら分泌した成長阻害物質によって種子の発芽が抑制され、かつての勢いを失ったことが上記の【問題】の理由のひとつと言われています。いわば自滅です。そこに在来種のススキなどが勢力を盛り返しているとか。それは日本の自然を愛する者にとって喜ばしいことでしょうか?ところが、北米では逆にススキが侵略的外来種としてセイタカアワダチソウのなかま(ゴールデンロッド類)の生息地を脅かしているという報告もあります。何だか考えさせられますね。
目の前の生物を安易に「悪役」と決めつけないで! と、セイタカアワダチソウは私たちに語りかけているような気がします。
【キーワード】外来生物 花粉アレルギー ブタクサ アレロパシー(他感作用)
参考 Wikipedia「セイタカアワダチソウ」











